そらから。 color.1 「お姉さまは今を求める」
(そらから。 color.1 「お姉さまは今を求める」)
それは室内の空気に夜だけが持つ冷ややかさが纏う頃。
私の側では一人の少女が泣いていた――。
「くすんくすん・・・」
その泣き声はまるで幼い子供がすすり泣いているかのよう。
そんなシチュエーションはあまりに不意打ち。
だって、途端に私はあなたのことを愛おしいと思ってしまったじゃない。
それがきっと今だけだろうと。
ねえ、あなたは私に今を感じさせてくれるの?
なら、そっとあなた抱き寄せて。
それから、あなたが決して痛がらない程度の力で、ぎゅ・・・って抱きしめて。
すると、あなたは小さく声にならないような言葉を発し、それを境に零れる滴も止まった。
私はそんなあなたの頭を優しく撫でて。
それは指先ではさらやかに、手のひらではくすぐったい。
そして軽くて力のないあなたは私にされるがままに。
だけど、そこには嫌がっている素振りはまるで見えない。
「ああ、お姉さま・・・」
そう夢見るように呟いて、あなたは私の顔を見上げてきたわ。
だから、私はにこやかな笑みをちゃんと返してあげる。
するとあなたはより嬉しそうな表情浮かべるのだから。
ふふ、そうよ。私はちゃんと知っているわ。
あなたはこうされるのが嬉しいのでしょう?
だって、いつかの夜にもそれは二人で確かめ合ったのだから。
あの夜は今日より寒かった。それに雪も降っていた。十二月の雪。
「ねえ、白くて、雪ってまるで綿帽子みたいじゃない?けど・・・冷たい」
私はあなたにそんなことを話したかしら。いつもよりも幾分言葉多めに。
すると、あなたは私の目の前でころころ笑ってみせた。
その笑顔は私の中で白い世界を咲かせる。
そこではただ一輪だけ咲いている。
それは私だけにしか見つけられない、真っ白な花があるの――。
そう、だからこそあなたは特別。
だって、今の私がそう思っていられるのだから。
この手で触れて。その花びらに指は沿わせて。
そんな白い・・・ええ、きっと真っ白な百合の花。
今はそれに・・・この指と唇で更なる白を与えてみたい・・・。
それから二人はだんだんと言葉少なくなって。
その内にそれを発するものは塞がってしまって。
いいえ、私が塞いだのよ。
そして、その時の柔らかさも温かさを・・・まだ私はちゃんと覚えていた。
ええ、私はいつでもちゃんと覚えている。
だけど、すぐに忘れてしまうことも同時にできる。
そして、今の私は自分の唇へと自らの右手の人差し指を軽く押し当てた。
するとあなたはそういう雰囲気を感じたのか、そのつぶらな瞳を小さく伏せる。
可愛い子。
私はそう心の中で思った。
そして同時に馬鹿な子だわ・・・とも。
いいわ、今夜もそのまぶたに優しい口づけをしてあげる。
私の可愛いお気に入りの、まるでお人形さんのようなあなた。
その代わりにちゃんと私に今を感じさせて。
でないと、きっと私。
・・・そう、お人形にはたくさんの代わりもあるのだから・・・。
(color.2へと続く)
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