そらから。 color.〆〆〆 「断章」
(そらから。 color.〆〆〆 「断章」)
美空と別れてから・・・そして――。
午後の授業を始める鐘の音が、私の教室、その窓際の席に着いた途端に鳴った。
今日の午後から最初の授業科目は数学。
ああ、これはまたいい感じで一眠りできそうね。
ふふ、ほんと私なんかにエトワールなんてやらせてはいけないのよ。
だって、とても誰かのお手本になんてなれてないでしょう。
いけない意味でのお手本になら・・・ともかくとして・・・。
て、ここまでやる気もないのに、それでも私なんかでいいのかしら。
いいえ、問題ないのである。
これも謎だった。
さすがはエトワール。何もかもが謎に包まれている。
そんなこの世に幾つかある、不思議で素敵称号の一つなの。
あ、数学教師の田島先生が教室の壇上に立たれた。
今は数学の授業だが、他の授業では当然別の先生方が教壇へと立たれる。
(そらから。 謎の女教師編・「サクリファイス 前編」)
そして、生徒である私たちは田島先生に簡単な礼をして、それから簡潔に欠席を取った。
それからチョークの音が教室内に響き渡って、
黒板は無数の数字によって黒いスペースを少しずつ減らしていく。
それを黒板と言っても、私には藍色にしか見えないけれど。
ねえ、私が其処に文字を描けばそこはたちまち愛のキャンバスに変わるんだから。
ふーっと窓からは風が入ってくる。
それはとても穏やかで気持ちのいい風だった。
私は窓際の席って好き。
だって、そこからも空が見えるもの。
ええ、空はいつも私に世界を与えてくれる。
だから好き。とても好き。
そう思った時に、カッカッとチョークの音はリズムよく弾んで私には聞こえた。
その音を一つ一つ数えながら。
それを枕詞へと巧みに頭の中で変換しながら。
その内に私はだんだんと夢の中へと落ちていくのだ。
ねえ美空。
私はまた明日もあなたに会えることが楽しみだわ。
さっきの風があなたの元へも届きますように。
私にある、この想いも一緒に乗せて。
まどろみの中で、確かに私はそんなこと思っていた。
そして私は夢を見る。
それはこの世界の何よりも美しく、何よりも密かな永遠を感じさせるような空の夢。
それは私たちにある物語へと、
まだ誰も知らないはずの物語へと続いていくの。
じゃあ、あなたにまた会えるだろうその時まで。
「おやすみ・・・」
それは・・・まさに夢に落ちる・・・その瞬間だった。
私はそんな言葉を、きっと最後に呟いていた。
それから、それから、そらから。
言の葉かすんでしまった最後に、いったい誰の名前を呟いたの・・・だろう。
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
それは空からの優しい日差しが、空音の長い髪へと温もり分け与えてくれた。
空音はその中でとても気持ち良さそうに、
それは安らかなるような表情浮かべて・・・眠っている。
そよ風が空音の髪をフワリとくすぐった。
サラサラの髪が文字通り「サラサラ」といった音を奏でるようにして揺れていた。
そして、このそらいろなせかいは、まだ始まりを迎えたにしか過ぎない。
その「彼女」が目覚めた時から、この空殻に隠された世界は真の姿を現す。
そう、それは空からの贈り物なのかも・・・そらしれず――・・・。
(そらから。 〜prelude〜 「断章」)
(そらから。 サラサラっとあとがきに続く)
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