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そらから。 謎の女教師編・「サクリファイス 前編」

2008.02.25(Mon)


(そらから。 謎の女教師編・「サクリファイス 前編」)


それは何時かの夜のこと。

それは私立聖真女学園の一階片隅にある保健室にての出来事――。

一人の白衣を纏った大人の女性がデスクに向かって何やら作業をしている。

それは後ろで長い黒髪を一つに束ねた姿が印象的だった。

なぜならば、その白い背中で黒が艶やかにも映えるのだから。

そして、その黒は彼女が顔を横に数回振るたびに、右へ左へと揺れ動いた。

何をそう、彼女は顔を振っているのだろう。おそらくは仕事を片付けている最中なのであろうが・・・。

だが、それにしてはあまりに遅い時刻でもある。

時は時刻にして22:00を過ぎた頃だった。

この部屋の中も蛍光灯の灯りが多少薄暗く。

そして、その白衣の女性。

彼女はデスクの引き出しを、その白くも華奢な右手で開いた。

其処には小さな赤いリボンの付いた、幼げにも可愛らしい洋紙で包んである一つの箱があった。

女性はそれを手にとって、口元を歪めるように微笑を浮かべる。

その口内から密やかにも姿現した赤い舌が・・・唇を軽く濡らしてから引いていく。

それはまるで何かを味わうような感じに見て取れる仕草だった。

だとすると、一体彼女はその時にどのような味覚を覚えたのだろうか。

彼女は恍惚気な表情を浮かべながら、先ほどの包み箱へと頬をすり寄せる。

まるでその仕草は・・・何か愛おしいものへと愛撫するかのような動き。

ゆっくりゆっくりと、それは切なげに彼女の白い頬の表面で上下する。

だが、時には其処で温もり見つけたように・・・静止して。

そんな時には彼女は何を考えているのだろうか。

まるで何かを待ちわびているような・・・そんな、そんな光景だった。

その時だ。コンコンと部屋に響き渡った音二つ。

それを境にして彼女は包み紙をデスクの引き出しへと戻し、

それから衣服と髪を軽く直して・・・つい今しがたに音が鳴った方向へと声を発した。


「その扉は開いているわよ」


扉の向こうからは少しだけ躊躇うような空気。

この保健室と扉の向こうでは、何らかの違いがあるのだろうか。

だとすれば、それを隔てているのは・・・その一枚の扉なのであろう。

それは茶色の簡単な装飾のされた、だが木で出来た数枚の板を重ねたものに過ぎない。

そして、その扉はまるで開く者の気持ち表すようにして・・・たどたどしくも開いた。

隙間からはショートカットに髪を切り揃えた、

可愛らしいという言葉の似合うような少女が顔を覗かせていた。


「待っていたわよ。さあ・・・入ってきなさい」


白衣の女性が、その少女に向かって言葉を投げる。

だが、その言葉に対して返ってくる返事はなかった。

しかし、少女は扉から保健室の中へと入り、そして扉は重そうに閉められた。

それを音にすると・・・まるで何かの蓋が閉まったかのような金属音と共に・・・。


(後編に続く)

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