コードギアス創作・「紅い月は何処に浮かぶの?」
(コードギアス創作・「紅い月は何処に浮かぶの?」) 「参照リンク?・ギアスR2 第3話」
シャアアア・・・・。
その少女には自らの身体に打ち付けるシャワーの音が心地よかった。
この止め処なく流れてやまない暖かさが、今日も少女の気持ちを拭い去ってくれるのだから。
少女は瞼を閉じ、その顔面いっぱいに水滴を浴びる。
すると少女の瞼の奥で、くっきりと何かの映像が浮き上がってくる。
それは・・・あのバベルタワーにて・・・少女の前にゼロが帰ってきた時のことだ。
そして、その少女・「紅月カレン」は思い始める――。
その自信に満ち溢れたかのような言動は一年前とまるで変わってはいなくって。
あの神根島で見た光景はまるで嘘のようね・・・と。
ええ、もしかしたらそれは幻だったのかも知れない・・・と。
だが、今のカレンは嫌と言うほど理解もしていた。
それが何度も打ち消そうとした考えの果てに見つけた一つの結論だったのだから。
そう、それはその黒い仮面の向こうに隠されていたあなたの素顔よ。
(ゼロはルルーシュ)
そんなこと・・・私は言葉になんかしたくなかった。
だから、心の中で小さく呟くだけにするんだ。
ふふ、悔しいけど・・・こんなのささやかな抵抗よね。
その微笑みはカレンの心で少しの葛藤を引き起こさせた。
一年前、私と同じアッシュフォード学園に通っていた・・・ルルーシュ・ランペルージ。
あいつがゼロだった。
そして、あいつは私を、騎士団の仲間を・・・その「ギアス」と言う得体の知れない力で利用していたのだ。
私は・・・あいつを絶対に許さない。
なのに、今の私達にとって最も必要な存在と同意だなんて・・・それも皮肉なものよね。
だけど、決して心まで従いはしないわ。
そう、私にとって必要なのはゼロよ。
決してルルーシュではなく・・・ゼロなのよ――。
なのに、あいつは私の考えなんか見透かしたように覗き込んでくる。
私の瞳から・・・中へ。
それが当たり前のように・・・中へと。
そして、その瞳は無言のまま私の心に語りかけてくるのだ。
何もかもが自分の思いのままになるのだと言わないばかりに。
あいつ・・・何様のつもりなの。
私はそんなあいつが嫌いだ。ええ、嫌いよ。大嫌いだわ。
なのに、あいつは私がバニーガールの格好をしていれば服を肩にかけてくる。
寒くなんてなかった。
それにこんな格好だって好きでやってる訳じゃない。
当たり前じゃないの。誰が好き好んでバニーガールなんて・・・は、は、ハレンチなっ・・・くっ!
そうよ、こんなのシーツーにでも着せとけばいいのに!
なんで私が着なくちゃいけないのよっ!!
ま、まさか実は本当はルルーシュがさせているんじゃ・・・ないでしょうね・・・。
だとすると、シーツーも一緒になって私をだまして・・・だったらあの女・・・わ、私のゼロよ・・・。
ち、違う!違うわっ!!
あ、ああ、あれはルルーシュよ・・・け、けどゼロなのよ。
あっ、あーっ!もうっ!!
だから、あいつはどうしてそんなことしてくるのよ。
肩に・・・ふ、服っ・・・。
でも、こんなのも全て計算の内なんでしょう。
そんなの分かってる!
私だってバニーガールの格好なんかしちゃってたけど理解しているの!
わ、私は馬鹿じゃなーいっ!!
ああ、なのにどうしてその上着を暖かいだなんて思ってしまうのよ。
どうして私の心が揺れてしまうのよ。
分からない。そんなの分かりたくもないのに・・・身体が熱い・・・わ。
「・・・ゼロ・・・」
そう呟いた瞬間に、私は瞼を大きく見開いていた。
だが、その瞳にも容赦なく水流は降り注いでくる。
だから、すぐにまた閉じてしまったの。
ただ、そのまま顔では暖かい温もりと心地よい刺激を感じてる・・・。
そのまま、もっとその心地に肌を触れさせていたい。
そのまま、もっとその暖かさに身を委ねていたい。
ふやけてしまってもいいわ。こんなに気持ちの良いままでいられるのなら・・・。
でも、そんな心地のいい場所を、私はいつか感じていたかしら・・・。
そういえば一年前にあの学園で過ごす時間もそう悪くはなかった。
私もゼロの正体を知らなかったし、あそこには少なからず話せる存在もいたから。
ねえ、それは友達?
さあ・・・どうだったかしら?
でも、みんな優しかった。
お人よしなのか知らないけれど・・・私にも優しかった。
けれど、私も嘘をついていたのよね・・・あの人たちに――。
「はぁ・・・学園か・・・」
少しシャワーを浴びすぎてのぼせてきたのか・・・また行きたいなんて考えてる。
私にはもう遠い場所なのに。ルルーシュなら帰る事も出来るけれど。
でも、今の私には・・・もうあそこに帰る事は出来ないの。
そう、あの日に帰ることは二度と出来ないのよ。
だから私はここに居るんじゃない。
私がこうして存在していられる場所に居るんじゃない。
決して・・・ゼロじゃない居場所に居るんじゃない。
そうよ、だから見届けてやるわ・・・あなたの向かう先にある世界を――。
例えバニーガールの格好をしたって。例えバスタオル一枚になったって。
例え・・・うう、私ったら最近感傷的なのかも知れない・・・。
何だかシャワー室だけが私を隠さずにありのままで居られるの。
何もかも綺麗に洗い流してくれるのだから・・・。
そして、そう思ったとき、
私の瞳はいつの間にか排水溝の蓋の上に出来ていた小さな渦を見つめていた。
水が吸い込まれていく。どんどん其処に吸い込まれていく。
きっとその渦の中に私も・・・そしてあいつもいるのだろうか・・・。
そして、同時に私の右手が水を止めるバルブを捻った。
これ以上私を吸い込まれたくなかったのだ。そんな奥の見えない深くへと・・・。
シャワーは当たり前に止まり、数秒後にはその渦もかき消えた。
そんなもの、まるで最初から其処には無かったかのように。
それが何故か、酷く頭の片隅で印象に残った。同じく酷く不安に駆られた。
私はここに居るわよね?
ここにいる私は私のはずよね?
本当に嘘偽り無く本当の紅月カレンよね?
「あなたは誰なの?」
それは正面にある鏡を見つめながら、それこそ独り言のようにして問いかけていた。
だが、その問いかけに対して・・・誰も答えを返してくれる者はいなかった。
私は壁際に掛けてあったバスタオルを手に取り濡れた身体を拭く。
そして、目の前には黒の騎士団のコスチューム。もしくはバニーガールの衣装があった。
フフ、所詮私には選択する余地なんて無いのかも知れないわね。
だが、私は何もかもを無(ゼロ)とはしたくないのだ。
・・・ならば、今の私は何をその手に求めるのだろう・・・?
(〜終〜)
ピクチャースタジオ コードギアス 反逆のルルーシュ カレン




