そらから。 〜so la ka ra〜 杏子/image.1 「パッション!」
(そらから。 〜so la ka ra〜 杏子/image.1 「パッション!」)
気持ち空見上げながら、通り過ぎていく風が心地よかった。
その風はあたいの過ごす学院にも、あたたかな優しさと春の匂いを連れてきてくれたのさ。
ああ、そんなとてもいい香り。
それは、あたいは頭の中で桃色のイメージ浮かばせやがる。
花だ。
花びらが咲いて、あたいにおいでおいでしてきやがる。
だが、あたいがその花を前に見たのはいつだっただろう。
綺麗な花が咲いていたんだ。
それをあたいは「誰か」と見ていたんだ。
ああ、それは誰だったろうなあ・・・。
それもその花と一緒に、もう何処か記憶の片隅で散ってしまった気がするのさ。
けれど、その花はとても綺麗だった。
あたいはそんな気だけしているのさ。
そんな桜の花びらが、あたいはとっても好きだったはずなんだ。
ふふ〜っと、そよ風はやさしげに笑う。
ならばお返しにと、あたいだって「はは〜っ」とにこやかに笑いながら思ってみたのさ。
(なあ、お前はあたいの寂しさをさらってはくれないのかい?)
なのに、お前は・・・「あのこと」ばかりをあたいに思い出させる。
ああ、きっと春風のいたずらなんて、どこにもないのさ。
それがあたいたち乙女のセンチメンタリズ・・・
「きゃ〜っ!」
そうさ、春風の悪戯なんて、どこにも・・・おろっ?
って、あったな。マジかよ。しかも目の前だぜ。
やっぱりあるんだな。
こういう、まるでラブコメ漫画みたいな展開ってさ。
そして、それは物思いに耽っていた、「三波 杏子」を現実に返させるには十分な白昼劇だった。
そう、フワリと風のいたずらの犠牲となてしまったミニスカート。
その垣間からチラリと覗いたのは、白と薄桃色をした縞々だった。
ふう・・・あたいもあんなの穿けるのかよ・・・なあ?
って、ひゅるるるる〜・・・って、風以外に誰も答えてくれやしねえ・・・。
ようしっ、こうなったら今度の「空桜演武会」で優勝して!
そうすれば、あたいの願いも叶えられるんだ。
ああ、そうしたら・・・このあたいが願うことは・・・。
よしっ!それじゃあ特訓を再開しよう!!
あたいはあたいより強いやつに会いに行くっ!!
・・・はずだったのになあ。
まさか前回の演武で、あんな空音なんかに負けるなんて。
・・・ちっくしょおお・・・あいつは色々と手が込んでいるんだよおお・・・。
だが、今度は負けねえ。
そのために、こうして新必殺技を編み出しているんじゃねえか。
おお、今度の演武会を待っていろ。
今からあたいも楽しみだぜ。はっはっはっ・・・。
でも、またパートナーを探さなければならないのか。
こないだはパートナーにアリスを選んだのが・・・
ああ、そもそも失敗へのフラグだった気がするぜ・・・。
「ねえ、見てくださいませ。また杏子さんがおかしなお顔をなされておりますわ」
「しーっ。それを言ってはいけないルールですのよ。あのお方はあれでも本気なのですから」
「でも、本気で手から波動の力を放出させる・・・なんてことが出来ると思っておられるのかしら?」
「決まっているじゃない。あのお方は本気でそれをやろうとしておられるのよ・・・素敵じゃないの」
「す、素敵って、あなた何を・・・」
「あ〜ら、杏子様にはあれで隠れファンが多いのですことよ?」
「そっ、そうだったの!?」
「ええ、そうですのよ。あの方のパッションはそれはそれは・・・」
遠くでは杏子が正拳突きを繰り返していた。
「はっ!はあっ!はああーっ!!」
そして、それを遠巻きに眺めていた二人の少女たち。
ああ、この世界には何とも面白いものが。
まだ、どこかにはあるのかも知れない。
それこそ、もしかしたらの話ではあるが・・・――。
(杏子/image.1 「パッション!」 〜終〜)
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